特集
労働安全衛生マネジメントシステムの基礎知識

 国際標準化機構(ISO)が95年6月に規格化に向けた検討を開始した。その後、作業は中断したが、99年1月から国際規格化の検討が始まった。また、国際労働機関(ILO)では、2000~01年の計画予算に、国際的なガイドライン策定に向けた専門家会合の開催が盛り込まれた。各国ごとにも、96年に英国規格協会が「BS8800」、米国労働衛生協会が独自の安全衛生マネジメントシステムを開発して公表している。
 ほかの欧州各国でも規格・ガイドライン化が進んでいる。
 日本では、労災被災者数が98年で約517万7千人、死者は千8百414人となっており、労働省は99年4月にマネジメントの指針を策定した。
 英国規格協会が96年に公表した安全衛生管理システムに関する規格BS8800の内容については、翻訳著作権等の問題もあり、掲載できませんので、関心のある企業におかれては、各認証機関へ問い合わせ下さい。

労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針について
発表:平成11年4月30日(金)
担当: 労働省労働基準局安全衛生部安全課
電話 03―3593―1211(内線5488)
  03―3502―6754(夜間直通)
担当: 労働省労働基準局安全衛生部計画課
電話 03―3593―1211(内線5550)
   03―3502―6753(夜間直通)

 本日、労働省は「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針(平成11年労働省告示第53号。以下「指針」という。)」を公表した。
 労働安全衛生マネジメントシステム(以下「システム」という。)は、事業者が労働者の協力の下に、「計画―実施―評価―改善」という一連の過程を定めて連続的かつ継続的な安全衛生管理を自主的に行うことにより、事業場の労働災害の潜在的危険性を低減するとともに、労働者の健康の増進及び快適な職場環境の形成の促進を図り、事業場における安全衛生水準の向上に資することを目的とする新しい安全衛生管理の仕組みである。
 こうした新しい安全衛生管理に関する仕組みは、国際的にも新たな潮流を形成しつつあり、イギリス等が既に指針を定めているが、ILO(国際労働機関)においても国際的指針の策定に向けた取組みが進行している。
 労働省では、今後、システム普及促進事業等を通じて本指針の周知を図り、事業場における安全衛生水準の向上を図るとともに、ILOにおいて検討されている国際的指針の策定について積極的に協力して行くこととしている。

1 指針制定の趣旨

 労働災害の減少率に鈍化の傾向がみられている中で、安全衛生管理のノウハウを蓄積したベテランの担当者が定年等により退職する時期を迎えており、事業場において安全衛生管理のノウハウが十分に継承されないことにより、事業場の安全衛生水準が低下し、労働災害の発生につながるのではないかということが危惧されている。
 また、労働災害が減少していく中で、事業場によっては年間を通して無災害であることも珍しくなくなりつつあるが、無災害である職場でも「労働災害の危険性のない職場」であることを必ずしも意味するものではなく、労働災害の危険性が内在しているおそれがあることから、この潜在的危険性を減少させるための継続的な努力が求められている。
 一方、健康診断における有所見者の増加、高年齢労働者の増加等に伴って、労働者の健康の増進及び快適な職場環境の形成の促進が求められている。
 このような中で、今後、労働災害の一層の減少を図っていくためには、事業場において「計画―実施―評価―改善」という一連の過程を定めて、連続的かつ継続的に実施する安全衛生管理に関する仕組みを確立し、生産管理等事業実施に係る管理に関する仕組みと一体となって適切に実施され、運用されることが重要である。
 また、諸外国の状況を見ると、イギリス、オランダ、オーストラリア等において、「労働安全衛生マネジメントシステムの指針」等が公表されているほか他のいくつかの国々においてもその開発が進められており、こうした安全衛生管理に関する仕組みは、国際的にも新たな潮流を形成しつつある。(別紙1
 このような状況を踏まえ、今般、指針を公表し、関係労使の協力の下、事業場におけるシステムの確立に資することとしたものである。

2 指針の目的

 この指針は、事業者が事業場においてシステムを確立しようとする際に必要とされる基本的事項を定め、事業者が労働者の協力の下に行う自主的な安全衛生活動を促進し、事業場における安全衛生の水準の向上に資することを目的としている。

3 システムの概要

 システムの過程は、概ね次のとおりである。また、システムにおいては、安全衛生管理が継続的に実施されるよう、主要な過程は手順を定めるとともに、文書にして管理するほか、これをより有効なものとするよう、労働者の意見を聴取して、反映することとされている。(別紙2
 (1)安全衛生方針を表明する。
 (2)機械、設備、化学物質等の危険又は有害要因を特定し、それを除去又は低減するための実施事項を特定する。併せて、労働安全衛生関係法令に基づき実施事項を特定する。
 (3)安全衛生方針に基づき、安全衛生目標を設定する。
 (4)安全衛生目標を達成するため、上記(2)で特定された実施事項等を内容とする安全衛生計画を作成する。
 (5)安全衛生計画を実施及び運用する。
 (6)安全衛生計画の実施状況等の日常的な点検及び改善を行う。
 (7)システム監査を実施し、必要な改善を行う。
 (8)定期的にシステムの全般的な見直しを行う。
 (9)(1)から(8)までを連続的かつ継続的に実施する。

4 指針の普及促進

 労働省では、指針の普及促進を図るため、指針の説明会を開催するほか、事業場においてシステムを担当する者向けに、システムのそれぞれの過程において実施すべき事項の例等を示したテキストを開発することとしている。(別紙3

目次に戻る