電気機器

塩尻機械金属工業協同組合 理事長吉江昭八氏 塩尻機械金属工業協同組合
理事長 吉江昭八

「組合の過去と未来」
 私達の組合の歴史は古い。前身は塩尻機械金属工業会で、最初は8事業所で親睦を主体として組織されたと聞く。
 戦後、復員して職もないまゝに、或は心ならずも職を失ったりといった人達が、起業して操業している事業主が殆どであった。
 その中に、一人の先進的且つ先見性をもった先輩がいた。3年前に当組合の理事長を辞した宇治三義氏である。氏は職員を雇う余裕もないまゝに、自ら組合法を学び、初代理事長に小野雷介氏を擁して、遂に悲願の組合設立に漕ぎつけたのである。
 二千年には、創立40周年を迎える。宇治三義氏は小野雷介氏急逝の後を受けて、理事長に就任。30年余に亙って其の職にとどまり、組合の発展に尽くされた。
 とりわけ組合会館建設への道のりは、9年間に及ぶ雇用確保事業の成果であり、氏の集大成でもある。
 今、其の会館が組合活動の拠点として、毎月の例会や定例理事会のよりどころとなっている。
 会館建設に当っては、行政の助成で賄われると云う事情から全市を網羅した組織でなければならないとの見地から、会議所会報を通じて加入企業を募り、47企業を擁する組合へと発展した。
 40年の間には、悲運な事例も数企業に及んだ。工業と言っても業種は多岐に亙る。それ故に、最悪の事態に至っても、全面的に深入りできないもどかしさがつきまとう。それは、組合の存続と発展の前に立ちはだかる大きな課題でもある。
 私達の組合は、金融と共同購入、それと賦課金によって運営されている、異業種の組合である為に、大胆な収益事業の展開は困難である。私達の組合のみならず、親会社を中核とする様な組合も又、難しい時代に来ている事は想像に難くない。
 優雅な収益構造に支えられた組合もあるやに聞くが、我々の組合は、画一的な履修や思想統一で存続できる構造体質ではないだけに、長い年月をリードしてきた先輩に驚異的な力を感じると共に、改めて敬意の念を覚える。
 私は、今年5月の総会で指名を受けた俄か理事長、組合の未来像を語るには、自らの企業も含めて余りにも未熟である。繁栄はおろか、存続すらも危惧する此の頃である。
 これからの課題として、業種や規模を問わず、全組合員のニーズに耳を傾け、そして勢を増しつゝある市内のベンチャー企業にも積極的に加入を働きかけて、全市的に工業関係企業の組織化を図り、行政に対し多角的に要請を伝達できる団体に昇華していきたい。
 そして、個々の企業の力を高めながら、全体を底上げしていく為に何ができるかを見極めたい。
 幸い、千年紀のイベントが世界各地で催される。不景気である筈がないと信じて、僭越とは思いながらあえて、不遜の筆をとった次第である。

辰年の業界展望へ戻る