4.労働条件・福祉の向上

(1) 中小企業集団に対する助成制度

事業協同組合、商工会などが構成員を対象として労働者福祉の向上などを図るため、退職準備、健康管理セミナー等の開催、体育・文化・教養活動、福利厚生実態調査の実施、資料の配布、福祉推進員の設置などの事業を行う場合には、指定を受ければ補助金が交付されます。また、これらの集団がつくる都道府県ごとの連合会が、自主的、継続的に人事・労務管理改善のための事業を行う場合、その経費の一部が補助されています。

(2) 中小企業勤労者総合福祉推進事業の推進

中小企業勤労者及び事業主が共同で、市区町村単位に「中小企業勤労者福祉サービスセンター」を設立し、①在職中の生活の安定、②健康の維持増進、③老後生活の安定、④自己啓発、⑤余暇活動、⑥財産形成などの総合的な福祉事業を行う場合に、市区町村を通じて運営費等が助成されます。

(3) 中小企業時短促進援助事業

労働時間制度の改善の取組が遅れている事業場が多数を占めている中小企業集団を対象として労働時間短縮を円滑に進めるための指導・援助が行われます(労働時間短縮支援センターを通ずる援助)。

(4) 企業内労働時間適正化推進体制整備事業

各企業が労働時間短縮の実施体制を整備し、自主的な取組を推進していくことができるよう、その中心的な役割を担い得る企業内責任者を養成するための講習会が全国各地で開催されています(労働時間短縮支援センターを通ずる援助)。

(5) 中小企業における労働時間短縮に対する助成

労働時間短縮実施計画推進援助団体助成金

「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」に基づき同一業種の複数の事業主が自主的に策定する労働時間短縮実施計画の円滑な実施を支援するため、当該計画の承認を受けた事業主を含む中小企業事業主の団体が傘下の事業主に対して指導援助を行う場合に、その3分の2(1,000万円が限度)が2年間にわたり補助されます(労働時間短縮支援センターを通ずる援助)。

② 特例事業場労働時間短縮奨励金

週46時間労働制が適用されている特例措置対象事業場の事業主が、平成13年3月31日までに、150万円以上の省力化投資、常用労働者の新規雇用又は労働時間制度の改善についてのコンサルタントの活用を行い、就業規則その他これに準ずるものを変更し、週所定労働時間を1時間以上短縮して週44時間以下とした場合に、措置の内容に応じて一定額が支給される制度です(労働時間短縮支援センターを通ずる援助)。

③ 事業主団体等特例事業場労働時間短縮促進助成金

週46時間労働制が適用されている特例措置対象事業場の事業主の団体等が、傘下の特例措置対象事業場が平成13年3月31日までに、週所定労働時間を44時間以下とするための取組を行うことを促進するため、その構成事業主に対して、労働時間短縮に向けた気運の醸成、啓発、労働時間制度の改善についての指導等を行った場合に、その事業の実施に要した費用の一部(市町村単位の団体等の限度額500万円、都道府県又はこれに準ずるものを単位とする団体等の限度額1,000万円)を助成する制度です(労働時間短縮支援センターを通ずる援助)。

(6) 勤労者のボランティア活動参加のための環境整備

勤労者がボランティア活動に参加できるよう環境整備を図るため、勤労者のボランティア活動に関する情報の収集・提供、相談の実施等の事業を行うとともにボランティア休暇・休職制度の普及促進、勤労者のボランティア活動に関する啓発・援助が企業等を通じて行われています。

(7) 勤労者リフレッシュ対策

職業生涯の節目節目に一定期間職務を離れ、心身のリフレッシュを図るリフレッシュ休暇制度の普及促進を中心とする勤労者リフレッシュ対策が中小企業集団等を通じて推進されています。

(8) 中小企業安全衛生活動促進事業助成制度

地域別、業種別等に組織された中小企業集団が、自主的に安全衛生管理体制の確立(集団安全衛生運営委員会活動等)、労働災害防止のための活動(安全衛生教育、安全衛生診断、特定自主検査等)、健康確保のための活動(健康診断、作業環境測定等)、快適職場づくりのための活動を行う場合、これに要する費用の全部又は一部が助成されます(中央労働災害防止協会を通ずる助成)。
また、本制度の認定集団に属する中小企業のうち、機械の本質安全化や作業環境改善に取り組む事業者に対しては、それぞれに必要な機器の取得に要する費用の一部についても助成されます。

(9) 小規模事業場等団体安全衛生活動援助事業

小規模事業場の安全衛生水準の向上を目的として、都道府県労働基準局が選定し中央労働災害防止協会により登録を受けた中小企業者の事業場であって、かつ、労働者数が50人未満の事業場を主たる構成員とする団体及びその構成員たる小規模事業場が行う安全衛生活動に対して支援を行います。
支援期間は2年間であり、登録団体に対し、運営委員会の開催、安全衛生管理活動計画の策定、経営者講習会等、構成事業場に対しては安全衛生教育、特殊健康診断、安全衛生診断等の支援を行うことになります(中央労働災害防止協会において実施)。

(10) 労働者健康確保事業助成事業

心とからだの健康づくり(Total Health Promotion Plan)を推進するため、健康づくり活動を指導するスタッフの養成のための研修を実施しています(中央労働災害防止協会において実施)。

(11) 労働災害防止特別安全衛生診断事業

死亡災害等の重篤な災害が発生した事業場等に対し、国の費用負担により企業外の専門家による労働災害防止に係る安全診断を実施し、安全水準を向上させる制度があります。

(12) 専門工事業者安全管理活動等促進事業

鉄筋工事業、左官工事業等の専門工事業者が行う安全管理計画の作成、安全衛生教育の実施をはじめとする労働災害を防止するための活動等に対する支援が行われています。

(13) 木造家屋等低層住宅建築工事安全対策推進モデル事業

木造家屋等の建築工事における墜落災害の防止を図るため、足場先行工法による工事の実施に対する支援が行われています。

(14) 労働安全衛生融資制度

労働災害を防止するため、中小企業などの職場環境を改善することを目的とし、都道府県労働基準局長が認めた「安全衛生改善計画」を実施する中小企業者等に、その資金の融資を行うものです。計画に基づいて機械や設備、建物の新・増設、改造をする場合などにその改善に必要な額の90%(最高3億円)までが、資本もしくは出資額が1億円以下の法人、または常時使用する労働者の数が300人以下の法人または事業者については年利2.0%、それ以外は年利2.5%(平成10年4月8日現在)で労働福祉事業団から融資されます。

(15) 地域産業保健センター

小規模事業場に対して、健康相談の実施、事業場への個別訪問指導等の産業保健サービスの提供が行われます。

(16) 小規模事業場産業保健活動支援促進事業(産業医共同選任事業)

小規模事業場において産業医の要件を備えた医師を共同して選任し、労働者の健康管理等を行わせる場合、その医師の選任費用の一部が助成されます(労働福祉事業団・都道府県産業保健推進センターを通ずる助成)。

(17) 最低賃金制度

最低賃金法に基づいて、労働者に支払うべき賃金の最低限度額が決められています。最低賃金には、地域別最低賃金(各都道府県内のすべての産業に適用される)と産業別最低賃金(特定の産業に適用される)があり、その金額は、賃金・物価等の動向に応じて毎年改正されてきています。
また、都道府県労働基準局及び労働基準監督署では、賃金相談室などを設け、個別に賃金制度等の相談に応じています。

(18) 賃金制度整備改善のための指導・援助

都道府県労働基準局及び主要な労働基準監督署において、賃金相談室を設けて学識経験者等の賃金相談員による相談を個別に行っています。また、都道府県労働基準局において、地元企業(規模100人以上)で構成する賃金問題研究会を設置し、賃金・退職金制度に関する問題点を研究する等、自主的な制度改善に資するための援助を行っています。
このほかに、賃金制度の整備・改善に意欲を持つ中小企業団体や中小企業を対象に、企業の実態に応じた賃金制度のひな型(賃金制度モデル)の作成、自主点検表の作成・提供及び中小企業賃金アドバイザーによる賃金制度診断等、賃金制度の整備・改善のための支援を行う事業が全国労働基準関係団体連合会を通じて実施されています。

(19) 中小企業退職金共済制度

単独では退職金制度を設けることの困難な中小企業者のために、中小企業労働者を対象とする一般の中小企業退職金共済制度と、特定の業種(建設業、清酒製造業及び林業)の期間雇用者を対象とした特定業種退職金共済制度が勤労者退職金共済機構により運営されており、中小企業従業員に係る退職金制度の普及が図られています。掛金は事業主負担ですが、税制上損金又は必要経費となります。

(20) 未払賃金の立替払制度

企業が倒産したために賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、未払賃金のうち一定範囲のものを事業主に代わって国が立替払をする制度があります。

(21) 勤労者財産形成促進制度

勤労者の貯蓄や持家取得等財産形成の促進のため、各種の制度が行われています。

① 財形貯蓄制度

ア.一般財形貯蓄

勤労者が金融機関と契約を結んで3年以上の期間にわたって定期的に事業主を通じて積み立てていく使途を問わない貯蓄です。

イ.財形年金貯蓄

55歳未満の勤労者が60歳以降に年金として支払を受けることを目的として、財形年金貯蓄を行う場合には、財形住宅貯蓄と合わせて元本550万円までの利子非課税の優遇措置がとられています。この非課税措置は退職後も年金の支払が終わるまで継続されます。

ウ.財形住宅貯蓄

55歳未満の勤労者が持家取得等を目的として、財形住宅貯蓄を行う場合には、財形年金貯蓄と合わせて元本550万円までの利子非課税の優遇措置がとられています。

② 事務代行制度

中小企業の事業主が、財形貯蓄等に係る事務を、構成員となっている中小企業団体等(事務代行団体)に委託することができます。

③ 財形給付金・基金制度

事業主が、財形貯蓄を行っている勤労者のために金銭を拠出し、一定期間運用後に勤労者がその元利合計である財形(基金)給付を受ける制度で、事業主及び勤労者に対して税制上の優遇措置(事業主は損金又は必要経費、勤労者は一時所得扱い)が講じられています。財形(基金)給付金を拠出する中小企業事業主に対しては、拠出額に応じて財形助成金が、また、基金設立時に財形基金設立奨励金が支給されます。

④ 財形活用給付金・助成金制度

一般財形貯蓄から払い出した金銭を特定事由(育児、教育、介護、自己再開発)のために必要な資金に充当した勤労者に財形活用給付金を支払う事業主に対し、財形活用助成金が支給されます(中小企業の事業主に対しては、助成金額に優遇措置が設けられています。)。また、事業主及び勤労者に対して税制上の優遇措置(事業主は損金又は必要経費、勤労者は一時所得扱い)が講じられています。

⑤ 財形持家融資制度

自ら住宅を建設、購入、改築する勤労者又は勤労者に住宅を分譲するために住宅の建設、購入を行う事業主等に対し、雇用促進事業団等により長期・低利の融資(財形貯蓄残高の10倍相当額以内で、4,000万円限度)が受けられます。また、国の利子補給により貸付利率の引下げが行われています。

⑥ 財形教育融資制度

財形貯蓄を行っている勤労者は、自己又は同居の親族の教育に要する資金(財形貯蓄残高の5倍相当額以内で、450万円限度)の低利融資を雇用促進事業団から受けられます。

(22) 社会保険

労働者災害補償保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険などの制度があります。
このうち、労働保険(労働者災害補償保険と雇用保険の総称)には、中小企業の事業主の事務負担の軽減を図るため、当該事業主が行うべき保険料の申告・納付や各種届出等の労働保険事務を、労働大臣から労働保険事務組合として認可された事業主の団体などに委託することを認める「労働保険事務組合制度」があります。処理の適正な事務組合で一定の要件を満たすものには「報奨金」及び「小規模事業被保険者福祉助成金」が支給されます。
また、労災保険制度においては、事業主の災害防止活動を促進する視点から、一定の規模以上の事業について、個々の事業ごとの災害率の高低に応じ、保険料の増減を行うメリット制が設けられています。
メリット制には、中小企業事業主が、労働省令で定める労働者の安全又は衛生を確保するための特別の措置を講じ、その措置を講じた年度の次の年度の4月1日から9月30日までの間にメリット制の特例の適用の申告をしているときその措置を講じた年度の次の年度から3年間、メリット制が適用になる年度に限り、メリット制による労災保険率の増減幅を拡大する特例が設けられています。

(23) 福利厚生施設に対する融資制度

従業員のための住宅、その他の福利厚生施設の設置に対しては、長期・低利の融資が行われており、中小企業には金利などが優遇されています。金融機関、融資対象施設及び金利のあらましは、次のとおりです。

① 雇用促進事業団

「雇用促進融資」として、労働者住宅、福祉施設、職業訓練施設、通年雇用設備、高年齢者職場改善資金など。融資率90%以内、年利2.0%(平成10年4月8日現在)

② 労働福祉事業団

「職場環境改善資金」として、機械器具その他の設備、建物・構築物、これらの措置に必要な土地の取得・整備、運転資金など。融資率90%(3億円限度)、年利2.1%(平成11年2月17日現在)

③ 勤労者退職金共済機構

「中小企業退職金共済融資」として、社宅、独身寮、食堂、娯楽室、更衣室、体育施設、保養所、託児施設など。融資率最高70%(5,000万円限度)、年利2.0%(平成11年6月1日現在)

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