4.中小企業の新規創業等の支援

(1)特定新規事業実施円滑化臨時措置法(略称:新規事業法)による支援

画期的な技術やノウハウ、アイデアを持つ企業等が商業ベースでの商品の生産等を開始するスタートアップ段階を支援する施策です。ベンチャー企業等が円滑に資金調達できるよう事業のリスクを国と民間で分担し、分担したリスクに応じて成功時のリターンを享受できる仕組みや人材確保のためのストックオプションを活用する制度があります。

 ①支援の対象

新商品の生産や新サービスの提供を行う等一定の要件を満たす新規事業の実施企業が通商産業大臣の「認定」を受けた事業の「実施計画」が対象となります。「特定新規事業」の認定の基準は以下のとおりです。

  • 社会通念上または通常の取引上「新しい」と認められる商品を生産したり、サービスを提供するものであること。又は、商品・サービスには新規性はないが、新技術を利用して商品の生産・販売やサービスの提供の方式を大幅に改善するものであること。
  • 実施する事業が通商産業省の所掌であること。
  • 生産・販売する商品や提供するサービスが企業活動や国民生活を向上させるのに役立つこと。

なお、「認定」対象が「実施計画」であるため、実施計画における資金調達計画、売上げ計画、営業政策、経営体制等が実現可能性をもつ妥当なものであることが要求されます。

 ②支援内容

  (a) 産業基盤整備基金による債務保証

「認定事業者」は、新規事業の実施に必要な設備の取得及び新規事業の通常の業務の維持に必要な資金調達のための社債発行(ワラント債、普通社債、転換社債)及び借入金に対し産業基盤整備基金の債務保証を受けることができます。保証範囲は社債発行又は借入金の70%で、無担保で債務保証されます(ただし、基金保証の2分の1は再保証が必要です)。なお、保証金額が3億円以下でかつ、親企業が存在しない等の一定要件を満たす場合は、再保証免除となります。

  (b) 新規事業投資株式会社による出資

「認定事業者」のうち、新設企業又は設立後5年以内(新規事業を実施する上で、必要不可欠な技術の特許出願、又は実用新案登録出願等を行っている場合には、当該出願等の日、又はノウハウ確立から5年以内の企業)で資本金10億円以下の企業は、新規事業投資株式会社から出資を受けることができます。(出資額は、債務保証だけでは十分な資金調達を行うことができない場合に、その補完的な措置として行うこととしています。

・資本金1億円以下の部分 30%
・資本金1億円超3億円未満の部分 20%
・資本金3億円以上の部分 10%

  (c) ストックオプション制度

ストックオプションとは、取締役や従業員が一定量の株式を一定期間に一定の価額で、会社から買い受けることのできる権利のことで、認定事業者が、ストックオプションを付与できるのは、特定新規事業の実施に必要な人材(取締役・従業員)に限られます。
「ストックオプション」制度は一定の条件の下で認められるものです。

  (d) 情報提供

産業基盤整備基金(03-3241-6283)は、企業と企業、企業と人材との出会いの場を提供するサービスをインターネット上で行っています(無料)。具体的なサービスとしては、以下のものがあります。(ホームページアドレス http://www.isif.go.jp)

  • 新規事業計画の登録、紹介によるパートナーの募集
  • 進出・企画を希望している事業分野、企業の情報
  • 新規事業の検討・評価・実施に必要となる人材の情報等

(2)中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律

現在、中小・ベンチャー企業の未公開株等に対する投資を行っている投資事業組合は、一般的に民法上の組合を基礎としているため、法的には、投資家の有限責任が担保されず、投資家の情報入手の権利が不十分であるため、本法を創設することにより、業務執行組合員の無限責任及び他の組合員の有限責任を法的に担保し、責任制限の存在につき債権者に予見可能性を与えるため、公示制度(登記)を整備するとともに、債権者保護のため、組合の責任財産を充実するための措置を定めることとした。
本法は、平成10年5月28日成立し、6月3日公布され、11月1日から施行されている。

(3)その他の諸施策

 ①補助制度

  (a) 地域産業創造基盤整備事業

第3セクターが地域の中小企業が行う新商品、新技術等の開発を支援する施設を設置する事業に対し補助します。

  (b) 創造技術研究開発費補助金

中小企業者が自ら行う新製品、新技術、公害防止、省ネエルギー等に関する技術研究又は試作に要する経費の一部に対し補助します。

  (c) 活路開拓調査指導事業におけるニュービジネス振興枠

組合等におけるニュービジネス振興のための将来ビジョンの策定及び当該ビジョンの実現化を支援する事業に対し補助します。

  (d) 中小ニュービジネス・メッセ事業

有望な技術又はサービスを有するニュービジネスを広く紹介するメッセ事業に対し補助します。

 ②融資・保証

(a)新事業育成貸付、(b)新規開業支援貸付(のれん分け貸付)、(c)地域中小企業新事業開拓貸付(フロンティア企業育成貸付)ほか、中小企業総合事業団の高度化融資(地域産業創造基盤整備事業)や中小企業設備近代化資金制度、新事業開拓保険の利用ができます。

 ③投資(中小企業投資育成株式会社による株式の引受け)

中小企業投資育成株式会社が、中小企業の設立に際して株式の引受けにより資金調達を支援します。

 ④公益法人による債務保証等

(a)財団法人ベンチャーエンタプライズセンター(VEC)、(b)財団法人中小企業ベンチャー振興基金等が、新技術、新製品開発等の研究開発を行う中小企業等の支援を行っています。

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