長野県建設事業協同組合連合会
代表理事 岡澤鶴夫

○平成11年の建設業界展望

 世界を取り巻く情勢は、ボーダレス化、グローバル化が進展、さらには環境、食糧、エネルギー問題が掲げられております。
 我が国においては住宅・社会資本の老朽化、価値観の多様化、高齢化・少子化を背景として、生産年令人口・個人消費・設備投資・住宅投資が減少し、景気が後退しております。
 景気後退の原因は、中期的にはバブル崩壊後の地価下落による銀行貸出債権の不良債権化により貸出が減少したのに伴い、中小企業を中心とした倒産、リストラ雇用調整が個人所得を目減りさせ、それによる個人消費・住宅投資の低迷等が発生したこと、短期的には一昨年の財政再建による増税等があげられると思います。
 また地方公共団体の財政難やアジア経済等の混乱がより深刻化させております。
 このような情勢下、平成10年度我が国は当初予算の77兆6691億円余のうち公共事業関係費を対前年比マイナス7.8%減の8兆9853億円で編成しましたが、さらに総合経済対策16兆6500億円のうち公共事業関係費を7兆7000億円及び総事業規模約24兆円超の緊急経済対策を行ったこと、また金融再生関連法を成立させました。今年は国の効果的かつ効率的な執行に期待したいところです。

 さて、建設産業は国内総生産の2割弱を担い、全産業の1割超の就業者で構成する我が国の基幹産業です。この建設産業にもWTO政府調達協定の発効による国際的な新しい競争の時代が到来し、国、地方ともども21世紀に向けて公共工事の入札・契約制度の改革、コスト縮減、公共工事の再評価等に取り組んでいます。長野県の建設業界としてこのような新しい競争の時代の到来により、次のような対応を行ってまいります。
1.技術力の向上
 ・技術者の育成、研究開発への投資
2.企業体質、経営基盤の強化
 ・経営方針・経営理念の明確な立案
 ・財務状況の安定化
 ・元請と下請との適性な関係の促進
 ・生産システムの改善やイメージアップ
 ・労働災害防止のための安全対策強化
 ・建設CALS/EC等の情報化の推進
3.地元への受注確保対策
4.環境に配慮した社会資本整備
 ・建設副産物の有効活用
 ・建設産業廃棄物処理対策
等が掲げられます。

 なお建設事業協同組合に関わる課題として、最近、中小建設業を中心に金融機関の貸し渋りによる財政悪化や工事代金決済に関わる問題があげられています。建設省はこの対処のため、発注者が建設業者に支払う工事代金を協同組合に債権譲渡を行い、組合が発注者から支払われる工事代金を決済されるまでのつなぎとして業者へ融資する制度を進めています。幸い同種の制度を当連合会は「建設工事施工資金制度」として昭和42年から運営しており、この新制度との整合性を十分に検討し、建設業者の手助けとなるようすすめて参りたいと存じます。

 当連合会は11の単協で構成され、各種研修会・講習会をはじめ金融事業、資機材の販売、用紙類の販売を行っています。
 本年は特に各単協の意見・要望を聞きながら、運営を行うとともに、ここ近年のOA化に対応するための研究を重ねて参りたいと存じます。

 最後になりましたが建設業界として今後の情報化・高齢化社会の到来に向け、環境に配慮した社会資本整備を通じて社会に貢献し、さらに建設事業協同組合として会員各位の皆様に対しスケールメリットを生かした奉仕を行い良い年にしたい所存でございます。

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