長野県商店街振興組合連合会
理事長 幸村辰雄

 あなたは今何をほしいですか?今夜は何を食べたいですか?但しお金を除いて、そんな問いに対し即座に答えられる人はあまり居られません。それだけ日本人の生活環境が良くなりすぎてしまったからではないでしょうか。昔なら、テレビが、洗濯機が、冷蔵庫が、洋服が…ほしい物だらけ…。夕食にはカレーが、豚カツが、お刺身が…食べたいものだらけ。お刺身が食べたいなどと言えば頭に拳骨が飛んで来るしまつ。然し乍ら昨今はそれでさえも望まない。別に何も無いから有るものでいいよ、たまにはお茶漬でも食べようか?いやはや変れば変る世の中ですね。

 日本人は、私達はそれだけ満ち足りた生活環境の中で暮らして居るのです。太鼓叩いて笛吹いて、初売・バーゲン・○○市と騒いで居るのは売手だけ。おまけに海外製品の入荷にともない価格破壊の安売り競争が激化してる今日、売上げは一品単価の下方現象、天変地変が無いかぎり景気の回復はしばらく望めないでしょう。とは申し乍ら利益の上がっている店舗は無い訳ではない。業界の現状を正しく判断し情報を収集分析し、今、消費者は何を望んで居るのか。価格は、品質は、色彩は、形状は、便利性は、あらゆる角度から研修し、一早く仕掛をして行く、そんな所から景気の上昇を見出す事が出来る可能性が有るのではないでしょうか。

 他力本願的景況好転は無いものと思わねばならない。実に淋しく商売しずらい世の中に成ったものだ。

 あまりにも恵まれ過ぎた、しっぺ返しと思わねばならない。占師、予言者でも云い切る事が出来ない景況見通しなど私にはとてもわかるはずがない。然し、唯々云える事は、其の中でどの様に先を見通す研修を積むか、そしてどの様に対処すべきかの努力を一日も軽ろんじてはならないと思います。

 商店街の抱える悩みはあまりにも多過ぎる。市、町一番の立地を誇っていたのは、いつの日か、空店舗が目立ち、大型店が撤退し、歩行者が減少している。大店法の累次にわたる規制緩和による効力減少により無法地帯的郊外大型店出店増床、中心地で利益が上らなくなれば格安な地盤を求めて移転してしまう等やりたい放題。

 地元商店街と共存共栄の為に努力するとの一言はどこへ行ってしまったのか、誠に困窮そのものである。その郊外大型店同志の激烈な争いが今正に始まりつつある。弱肉強食は世のならい、と申せ既存商店街は絶対に弱肉になってはならない。

 工夫と智恵が必要であろう。大型店では実行出来ない専門店独自の営業方法があるはずである。物品販売し、会計を済ませるだけが商売ではない。信頼と安らぎと己を売る長年築き、継続したのれんを誇りに思う商売をしてこそ生きる道がある。

 不況の中での組合運営は賦課金だけの年会費では中々むずかしい事と思います。

 行政は商店街活性化の資金補助施策を色々と用意されています。その行政の指導を戴き乍ら最も適した條項を取り入れ会費以外の収入益のある事業開発をするべきであり、今が其の機会であると存じます。但し、過度な計画は墓穴を掘る事と成り慎重な実行が不可欠でしょう。
 全員の団結力努力を積み重ね明るい未来に向かって共々精進したいものです。

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