長野県事務機販売事業協同組合
理事長 龍野彰宏

○業界が抱える課題と対応

 依然、経済は低迷の中にあります。しかも、いっこうに上向く気配がありません。バブルの後遺症や産業構造の変化をも内在するだけに、厳しい状況はまだまだつづきそうです。

 われわれOA業界が抱える課題も多様です。大きなものを挙げるとすれば、1つはますますの競争激化であり、もう1つは新たな情報化への対応です。

 過度な競争の弊害は、サービス活動が削がれることです。本来OA(オフィス・オートメーション)というのは、事務処理の効率化、合理化のためのものです。OA機器そのものは単なる電子部品のかたまりで、それ自身が利用効果をもたらすものではありません。システムとソフトウェア、あるいは効果的な利用ノウハウとがマッチして、はじめて合理化や能率化に結びつきます。
 したがって供給側の役割は、お客様へのプレゼンテーションとソリューションにあります。ところが競争の激化が価格競争に偏り、ともすれば本来のサービスが蔑ろにされます。そのことは供給側だけでなく、ユーザーにとっても不幸なことだと言わねばなりません。

 もう1つの課題は、新しい情報化への対応です。
 この数年で、情報通信に関する規制緩和や新しい動きがかなり加速しました。設備投資も好調でしたし、技術革新のテンポも快調でした。デジタル化とネットワーク化の流れは、最早まちがいのないものになっています。
 行政や企業における情報化への関心も高まり、着実にシステムの構築や検討が進められてきました。当然OA業界にあっても、それに対応するための準備が進められてきました。システム対応を強化するために、人材の採用や育成がはかられ、徐々に体制を整えつつあったといえましょう。順調に、21世紀を迎える予感がありました。

 ところが、それに水を差したのがこのところの不況です。高度情報化への動きに停滞が生じ、また業界としての対応にも陰りがみられます。前述したように、デジタル化とネットワーク化の流れはとどまるところを知りません。次なる時代は好むと好まざるとにかかわらず、その中でビジネスが展開されるでしょう。それに向けた、一層の人材育成や体制強化は不可欠です。
 ところがもし、わが業界とその経営者が、目前の課題に追われて次の時代への備えを頓挫させるようだと、お客様のニーズをとらえられなくなります。

 時代の流れを正しくつかみ、それに対応する戦略を立て、企業をその方向に誘導するのが経営者の役割だとしたら、中・長期的な視点だけは見失わないようにしたいものです。

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