松本流通センター協同組合
理事長 宮坂眞一

○平成11年の景況見通し

 昨年4月の消費税引上げ、特別減税の廃止、そして9月からの医療費負担の増、加えて金融機関の破綻、不祥事件などから消費者心理が悪化し、個人消費が冷えこみ、秋以降は急激に景気が停滞しはじめ、今日に至るも景気回復がみられず、長びく不況から企業収益の悪化、先行き不透明感の高まりを背景に中小卸売企業の景況は、急速に悪化の度合いが強まり経営環境は極めて厳しい状況に直面しております。
 新しい年の景況見通しについては、極めて困難なことでありますが、政府は、今春景気回復のための諸施策を打ち出しておりますが、その効果は、本年秋頃から回復の兆しが見えてくるのではないかと予想しております。いずれにしても1日も早く、暗くて長い不況のトンネルを抜け出して、景気が回復することを願い期待しているところであります。

○地方中小卸売業の現状と課題

 先般、日経新聞が発表した「97年度の日本卸売業調査」をみますと、経常利益は対前年比16.2%減で過去最大のマイナスを示し、売上高も同じく30.4%減と不況の波を受け、軒並みダウンしています。全国卸の売上高では0.1%増の横ばいに対し、地域の卸では1.5%減、広域卸は1.3%減と規模間格差は、ますます拡大しております。特に時計、インテリア、繊維などのダウンの幅が大きく、一方で、食品、日用雑貨、医療品では再編が進み、今後の卸業の生き残りをかけ合併、提携等業界再編が今後ますます進むことが予想される調査結果であります。このような中で、当中小卸売業協同組合は、昭和58年高度化事業の指定を受けて組合員44社が集団化して卸売機能を高めるため、広い用地、施設を確保する目的で組合を組織して、各種の組合共同事業を実施して今日に至っております。
 しかし、激動する昨今の流通構造の変化により、従来の経営維持が困難な組合が増えつつあり、これまでの卸売業団地の性格では処理できない状況となってきております。中小企業庁の調べで、全国的にみると繊維や衣料、日雑などの組合員では、約4割近くが、「卸売業以外の業種」を求めていることがわかります。
 このように見ますと組合員の意識の変化がみられ、卸売業の維持より、組合員としての権利を保持しながら、より成長できる事業を行う卸売業団地への転換方向を望んで、新しい道を模さくする企業が見られる状況にあります。
 今後、規制緩和が進むにつれて、中小卸売業団地組合も、個々企業が自由な経営戦略で競争をめざし、いままでのメーカーから仕入れた商品を小売業に販売するという単なる商品供給機能だけでなく、多様な卸機能が必要となることから個別企業の持つ経営資源を共同による連係を図り相互に交流、活用しスクラムを組み、個別企業の限界を越えた枠組みに転換し、新しい事業展開を図り、大規模卸売業と競争する力を発揮する方向を模さくしているのが、現在の中小卸売業協同組合の共通した現状であり、課題であろうと考えられます。このように企業の壁、業種を越えて経営活動し活性化して、激動変化する経営環境に取り組もうとしているのが、中小卸売業者や協同組合の状況であります。
 従いまして、この様な中小企業者、組合に対して、中小企業の振興を図るための団体であります中小企業団体中央会におかれては、激動する経済社会の変革期に対応していくためには、組織の重要性をより一層認識させ組織の力こそ、この景気低迷による多事、多難な難局を中小企業組合が乗り切る道であることを積極的な指導に当られますことを希望しご期待申しあげます。

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