多摩川精機協同組合
理事長 後藤吉見

○21世紀に向けて
 我が国は今、出口の無い不況と云われる深刻な経済状況の中で政府あげて景気浮揚対策が進められておりますが、一向に快復の兆しを見せようとしていない。かつての高度成長を望む事は出来なくても中小企業にせめて希望のもてる日が来る事を願うばかりであります。私の住む飯田、下伊那地方は古くから養蚕の盛んな事で知られており収入は米と並んで農家の生計を支える為には重要なものであった。

 しかし時は移り農業経営の衰退と共に産業構造の変化に依るこの地方の経済地図は大きく変りました。今では飯田市における就業人口の構成比は、第一次産業12.2%、第二次産業37.6%、第三次産業に至っては全体の50.2%となっております。

 このようななかで、飯田地区は精密工業を中心に先端技術を導入した精密機械、電子工業、光学機械などのハイテク産業の発展に依り大手中堅基幹産業が生れ飯伊全体を引っぱって来ました。もともとこの地方は中山間地農業で来ただけに交通の便も悪く、臨海工業地帯のように重化学工業に依存する事も出来ず、付加価値の高い精密、電子、光学工業が必然的にこの地方に振興したのではと思われます。今や経済はグローバル化であり大競争時代であります。企業間競争が厳しさを増す昨今、貸し渋りやコスト削減が緊急な課題となっており、それに加え少子化、高齢化等このような環境条件下で地域工業が健全に発展を成し遂げる事は容易ではない。企業が生き残る為には企業構造の改革と同時に自立精神を養い強い経営を展開して行かなければならない。地域に根づいた特殊技術、コア技術を磨き既存企業が連携し協力して人材育成や新技術開発に努め、地域内外の若者に希望のもてる職場を提供出来る様にしなくてはならない。

 先日、飯伊地場産業センター主催に依る初の「飯田工業技術見本市」が開催され、『もの造りネットワークの創造を目指して』をテーマに多くの参加者があり新規取引先の開拓や、情報交換、交流が行われ大きな成果を上げその反響は大きかった。又、同工業技術センターでは飯伊の中小企業新製品開発を支援する為電気製品から発生する電磁波を測定する高度な「電磁適合試験設備」を導入この程着工、来年2月完成の予定である。おおいに利用しその成果を期待する所であります。21世紀は「森と水」がキーワードと云われる中で企業も又、右肩あがりの大量生産、消費の時代から地球環境に想いを寄せる、社会や、生活の面を重視する発想の転換が求められています。

 私共協同組合においても国際規格ISO9000シリーズの取得はもちろんですが親会社、多摩川精機(株)は98年9月にISO14001の認証を取得致しました。我々組合員もこの取り組みに呼応し、今後地球環境維持の為、地球に優しい企業を目指し行動を起こさなければと思っております。

卯年の業界展望へ戻る