長野県味噌工業協同組合連合会
理事長 藤森郁男

 長引く景気低迷を背景に、個人消費は冷え込みの度合いを強め、日本経済そのものが激変期にある中、味噌業界にとっても看過できない状況であります。

 味噌の主原料である大豆は、そのほとんどを海外に依存しており、昨年は史上最大の豊作にもかかわらず、世界的な食糧不足や為替相場の変動により相変わらずの高値であります。米に至っては食糧庁による実質的な統制が続けられ、昨年は5年ぶりの不作にもかかわらず、持ち越し在庫、ミニマムアクセスによる輸入米などで米余り状態が続いているものの、業界が希望する価格とは大きくかけ離れているのが現状で、依然として原料不安が続いております。さらに遺伝子組換え食品や有機食品の適正表示、容器包装リサイクル法の適用など、業界全体が積極的に取り組まなければならない多くの問題を抱えております。

 このような状況下にあって、味噌の需要と密接な関係にある米の消費は依然として減少傾向にある中で、幸いにも味噌の需要はここ3年間、対前年比プラスに転じております。これは6年前から全国味噌工連・みそ健康づくり委員会が展開している「みそPR事業」により、味噌が健康の維持増進に効果があり、「味噌は健康食品」との認識が広く一般の人々に浸透しつつある表れであります。マスコミによる味噌関連の情報発信も、飛躍的に増加し、消費者の情報接触度はかなりの割合となり、その結果、主食品が低迷する中で、味噌の消費低落傾向に歯止めがかかったと思料されるところであります。この共同宣伝事業のもつ意義は非常に大きく、これを基に業界全体がさらなる味噌の消費拡大に対する研究・努力を怠ってはならないものであります。

 また量的には少ないものの、輸出も順調に伸長し、特に昨年2月の長野冬季オリンピック・パラリンピックにおける味噌のPR活動で、味噌を世界に向けて発信できたことは業界にとって大きな財産となり、味噌のイメージアップ、消費拡大につながることを大いに期待しているところであります。

 今後、消費者の健康に対する食生活への関心が高まり、今まで以上に食に対する健康志向、安全志向が強まると思われます。さらに専業主婦の減少と高齢化、少子化社会に対応すべき消費者ニーズにあった商品の開発、業界が一致団結し、食生活を通じ国民の期待にそえるように努力してゆくことが、この難局を乗り越える対応策になると確信いたしております。

卯年の業界展望へ戻る