特集1

長野県中小企業危機突破大会開催

長野県中小企業危機突破大会 吉村知事

県経営者協会、県商工会議所連合会、県中小企業団体中央会、県商工会連合会、県商店街振興組合連合会の五団体の主催による、「長野県中小企業危機突破大会」が、去る10月9日(金)、長野市のホテル国際21千歳の間で開催された。五団体の主催による、このような大会は本県では初めてである。
当日は、県内の中小企業経営者ら800人が参加し、吉村知事、小林県議会議長、各政党の代表をはじめ、県内金融機関等来賓多数が出席した。
「深刻な不況の実情を訴えたい」と、4人の代表による意見発表と要望が出され、実効性のある景気対策の実施、所得税・法人税減税など10項目を決議し、関係方面に対して陳情を行うこととなった。
決議案採択の後、自由民主党衆議院議員小川元氏、民主党衆議院議員堀込征雄氏、社会民主党県議会議員浜万亀彦氏の各政党代表より、それぞれ所感が述べられた。

●意見発表・要望

1.景気対策・金融問題について

県中小企業団体中央会の市川浩一郎氏(不二越機械工業社長)長野市、より次のとおり意見発表がなされた。

長びく日本経済の低迷は、アジア各国へ飛び火し、世界同時不況へと発展する傾向があり、大変憂慮すべき状況である。
日銀の短観を見ても、中小企業製造業の業況判断は過去最悪の状況にある。この状況下で、県下の中小企業は個々の企業努力により、経営力アップに努めてきた。異業種交流や産学官の連携による研究も、本県では盛んに行われている。景気低迷の影響は極めて深刻であり、次の対策を早急に実施してほしい。

  • 危機的経済情勢から脱却するため、 緊急景気対策を適宜、適切に実施すること。
  • 中小企業対策費の拡充強化を図ること。
  • 金融システムの安定化と中小企業信用補完制度の拡充強化、政府系中小企業金融機関の資金量の確保を図ること。
  • 雇用の安定、創出に効果を与えるベンチャー企業等新規創業者への支援、強化を図ること。

2.税制問題について

県商工会連合会の川村邦太郎副会長(カワムラ精器社長)南佐久郡臼田町、より次のとおり要望が出された。

  • 所得税・住民税を65%→40%程度に引き下げること。
  • 累進課税の緩和を行うこと。
  • 法人所得課税の税率の引下げに応じ て中小企業の軽減課税を引き下げると共に、その適用所得限度額を引き上げること。
  • 減税財源の確保に名を借りた、いかなる増税にも反対である。
  • 賃金等を法人事業税の課税基準とする外形標準課税の導入に断固反対である。
  • 事業継承の場合の納税猶予制度の創設の検討、取引相場のない株式の評価方法の改善等、事業承継税制を抜本的に拡充すること。
  • 固定資産税、不動産取得税の見直し等、土地税制の改善や、経済波及効果が大きい住宅取得促進のための税制措置を拡充すること。

3.公共事業の地方重点配分について

県建設業協会総務委員長の安藤昭一氏(安藤建設社長)上田市、より次のとおり意見発表がなされた。

  • 建設業界は、長びく不況と公共事業の縮小などで、非常に厳しい状況にあり、これを打破するためには公共事業が最も有効であり、公共投資は 地方に重点的に配分すること。長野県については公共投資は今までかなり行われてきたものの、道路等もより一層整備する必要があり、一段の公共投資をお願いしたい。
  • 建設投資による関連産業を含めた地域経済への波及効果は大きく、雇用面でも重要な役割を果たし、災害復 旧や、除雪等交通確保等を通じて地域に貢献し、地域の中小建設業者はなくてはならないものであり、これらの業者を守り続ける必要がある。
  • 大型工事への参加、分離・分割発注の推進、さらに入札参加条件の緩和等により地元中小業者の受注機会の増大を図ること。

4.商店街活性化対策について

県商店街振興組合連合会の幸村辰雄理事長(こおむら社長)長野市、より次のとおり意見発表がなされた。

  • 今や郊外大型店同志の競争にあり、価格破壊による中心商店街の衰退が心配される。
  • 街づくり3法は相互の整合法を確保しつつ施行・運用を行うこと。
  • 大規模小売店舗立地法で定める指針は、中心市街地等街づくりに配慮したものにすること。
  • 中心市街地の活性化対策を大幅に拡充強化すると共に、国・地方自治体内部の体制を整備し、スムーズに実施できるようにすること。
  • 県振興公社による「中小商業活性化基金」の強化・拡充を図ること。
  • 小規模企業の週法定労働時間の特例措置(46時間)は、せめて景気が回復するまで維持していただきたい。

●大会決議

中小企業は、急速に進む構造改革の下で、国際的な大競争の本格化による価格競争の激化、製造業の下請分業構造の流動化、規制緩和の進展による中小小売業の廃業の増大など厳しい試練を受け、加えて金融システム不安が中小企業への貸し渋りとなり、景気回復が遅れるばかりでなく、深刻の度合を強めている雇用情勢もあり、その先行きさえ危惧される厳しい状況にあります。
しかし、産業の各分野にわたる中小企業の存在なくしては、わが国経済社会の活力の回復も安定的発展もあり得ません。
われわれ自らも困難を乗り越え、試練を克服して21世紀へ向けて経営の革新を図り、企業の社会的責任の遂行に全力を傾注することを決意するものであります。
政府は、このような中小企業の企業家精神の発揮と自己改革の取組みを一層強力に支援するため、次の事項の実現を図るよう強く要望する。

一 地域経済の発展を目指した中小企業の育成強化
一 実効性のある景気対策の早期・強力な実施
一 金融システムの安定化と中小企業金融対策の一層の拡充
一 中小企業信用補完制度の抜本的拡充・強化
一 ベンチャー企業等新規創業の創出・育成の支援強化と公的試験研究機関の充実強化
一 所得税・法人税減税による経済活力の回復
一 賃金等を課税標準とする外形標準課税の導入反対
一 中小企業の事業承継税制の抜本的拡充
一 地方の社会資本整備のため公共事業の重点配分
一 商店街活性化を踏まえた街づくり3法の実効性の確保

上記、決議する。

平成10年10月9日

長野県中小企業危機突破大会

長野県経営者協会
長野県商工会議所連合会
長野県中小企業団体中央会
長野県商工会連合会
長野県商店街振興組合連合会

●長野県中小企業危機突破大会決議要望を実施

自民党への要望 民主党への要望

大会決議を受けて、去る11月6日(金)に、主催者5団体の代表10人が上京し、来賓として出席された政党を訪問し、大会決議の早期実現方について要望を行った。
自民党では、宮下創平厚生大臣をはじめ、小川元、村井仁、小坂憲次、若林正俊の衆・参国会議員に面会した。
民主党では、羽田孜幹事長、堀込征雄、北沢俊美の衆・参国会議員に面会し、社民党は、北沢清功、村沢牧各国会議員の事務所を訪問した。
3政党は、10項目の決議及び追加された3項目の内容を充分検討し、実現方について前向きに努力する旨の、回答がなされた。
要望の内容及び、追加3項目は次のとおりです。

要 望

中小企業は、急速に進む構造改革の下で、国際的な大競争の本格化による価格競争の激化、製造業の下請分業構造の流動化、規制緩和の進展による中小小売業の廃業の増大など厳しい試練を受け、加えて金融システム不安が中小企業への貸し渋りとなり、景気回復が遅れるばかりでなく、深刻の度合を強めている雇用情勢もあり、その先行きさえ危惧される厳しい状況にあります。
しかし、産業の各分野にわたる中小企業の存在なくしては、わが国経済社会の活力の回復も安定的発展もあり得ません。
われわれ自らも困難を乗り越え、試練を克服して21世紀へ向けて経営の革新を図り、企業の社会的責任の遂行に全力を傾注することを決意するものであります。
政府は、このような中小企業の企業家精神の発揮と自己改革の取組みを一層強力に支援するため、次の事項の実現を図るよう強く要望致します。

別 記

景気対策として盛り込んでいただきたい内容

1.補正予算の早期編成

第3次補正予算について、とにかく早期に(11月中旬頃にも)決定すること。

2.国費で10兆円の補正予算編成

第3次補正予算の編成にあたっては、地方公共団体の財政状況を鑑み、地方財政に頼らず、国費で10兆円近い事業編成とすること。

3.思い切った住宅投資促進減税、雇用対策の実施

景気の浮揚に効果の高い住宅投資促進減税及び逼迫する雇用情勢に対応する雇用対策を思い切って実施すること。


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