18.小規模企業対策

中小企業の中でも特に零細な小規模企業(常時使用する従業員の数が20人以下の企業、商業・サービス業では5人以下の企業)に対しては、きめの細かい経営指導が行われているほか、特別な融資制度や事業主のための共済制度が設けられています。

1.商工会・商工会議所を通じた施策

(1) 経営改善普及事業

全国の商工会・商工会議所には経営指導員、専門経営指導員(広域指導センター、専門指導センターに設置)、記帳専任職員、記帳指導員などが設置されています。経営指導員は金融、税務、労働、取引、経理など幅広い分野にわたって、きめ細かく相談に応じて指導を行っています。記帳専任職員と記帳指導員は、記帳の指導のほか必要に応じて記帳事務の代行も行っています。小規模事業者が持ち込む売上や仕入の伝票をコンピューターに入力し、元帳や試算表などを整理して提供する記帳の機械化も進められています。
また、相談・指導以外にも、マーケティングや技術などの専門家を委嘱して指導に当たる経営・技術強化支援事業、大都市対策特別普及振興事業、創業支援指導事業、広域経営改善普及事業などが推進されています。更に、小規模事業者等の労働福祉対策等の充実のため、小規模事業労働環境改善研究事業、小規模事業者等健康維持増進支援事業(健康診断を受診する費用の一部を助成する)などが行われているほか、商工会等が行う地域振興事業支援のための「商工会等地域振興支援事業」、商工会を中心に地域の特産品や観光資源等を開発し地域産業おこしを図る「むらおこし事業」、過疎地域等の情報化を通じた創造的経済発展基盤づくりを図る「ふるさと情報発信事業」、大都市部生活者の地域経済への理解増進を図る「地方・都市交流推進事業」、海外情報を収集・提供するための「小規模企業海外展開支援事業」、商店街振興組合等が商店街の活性化に取り組む場合に専門家を派遣し指導等を行う商店街事務局強化支援事業、商工会等の青年部、婦人部活動を推進する「若手後継者等育成事業」、小規模事業者等が共通に抱える技術的問題等について調査研究を実施する「商工会等地域技術創造(地域わざおこし)事業」、「インターネット活用情報交流事業」などが行なわれています。

(2) 基盤施設事業

「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律」の認定を受けた基盤施設計画に基づいて、商工会及び商工会議所等が、商店街等の活性化、一般公衆の生活向上に寄与するコミュニティー施設、健康維持増進施設、駐車場等の商業基盤施設や地域開発に対する商品開発等における能力向上のための産業おこしの基盤となる施設等を建設取得する商店街・商業集積活性化施設整備事業、地域産業創造基盤整備事業に寄与する補助のほか、金融・税制等の支援が行われています。

2.小規模企業者のための金融

小規模企業者のための金融については、小口資金の融資を主とする国民金融公庫の融資があるほか、中小公庫や商工中金においても、小口融資については資金使途の緩和や審査の簡素化が行われています。
また、信用保証については、担保も保証人も提供できない小規模事業者のために、無担保・無保証人の特別小口保証制度があります。特別小口保証が利用できるのは、従業員20人以下(商業・サービス業では5人以下)の小企業者で、保証限度額は750万円までとなっています。
経営改善普及事業を金融面から補完する制度として、「小企業等経営改善資金融資制度」(マル経資金制度)があります。これは、常時使用する従業員の数が5人以下(商業・サービス業は2人以下)の小企業者及び小規模企業でその経営内容が小企業者と同様の実態にあるもので、地域の商工会会長・商工会連合会会長・商工会議所会頭の推薦を受けたものに対し、国民公庫から無担保・無保証人で必要な事業資金を融資する制度です。融資限度額は設備資金、運転資金ともに550万円以内で、貸付期間は設備資金が6年以内、運転資金が4年以内(いずれも据置6カ月を含む)、金利は年2.2 %となっています(平成10年6月30日現在)。
なお、阪神・淡路大震災に関し、貸付限度額の特例措置が講じられています。阪神・淡路大震災により大阪府及び兵庫県の区域内にある事業所又は事業活動に必要な主たる事業用資産について、全壊、半壊その他これに準ずる被害を受け、当該被害により事業活動に支障を生じている者に対する貸付限度額は 750万円となっています(取扱期間:平成10年7月31日まで)。

3.設備近代化資金貸付制度

設備近代化資金貸付制度は、設備近代化のため性能の優秀な機械設備を導入しようとする中小企業に対し、必要資金の2分の1を限度として、都道府県が直接に無利子の貸付を行う制度です。小規模企業の創業を支援するため、新規開業者(設立後3年未満の企業)を対象とする「創業枠」も設けられています。
貸付対象となる企業は、主として従業員が 100人以下の中小企業ですが、毎年度通商産業大臣が指定する業種あるいは通商産業局長の承認を得て都道府県知事が指定した地方産業振興業種に属する企業に限られます。
貸付対象となる設備は、毎年度通商産業大臣が業種別に定めた設備あるいは都道府県知事が地方産業振興業種に関して指定する設備で、性能が優秀であり、原則として新品であるものに限られます。貸付限度額は原則として50万円から4,000万円までとなっています。償還期間は一般の設備については5年以内、公害防止設備(中小企業近代化資金等助成法第5条ただし書きに規定する設備)については12年以内(いずれも1年据置)です。

4.設備貸与制度

設備近代化資金は、所要資金の2分の1は自己調達が必要なため資金調達力の弱い小規模企業には十分利用できず、また設備選定に当たっての知識など資金的な助成だけでは効果が十分でない面があります。
これに対して設備貸与制度は、地方公共団体の全額出資で設立された「貸与機関」が小規模企業者の申込みにより機械類を購入し、これを申込企業に貸与する制度です。貸与方法には割賦販売契約方式とリース契約方式があります。設備近代化資金と同様、小規模企業の創業を支援するため、新規開業者(設立後3年未満の企業)を対象とする「創業枠」が設けられています。
貸与対象となる企業は、一般設備の割賦については従業員20人以下(商業・サービス業は10人以下)の企業、ハイテク・情報機器等に係る割賦及びリースについては従業員80人以下(商業・サービス業は20人以下)の企業です。また、毎年通商産業大臣が指定する業種あるいは通商産業局長の承認を得て都道府県知事が指定した地方産業振興業種に属する企業に限られます。
貸与対象となる設備は、毎年通商産業大臣が業種別に定めた設備あるいは都道府県知事が地方産業振興業種に関して指定する設備で、単なる更新ではなく新鋭設備であることが必要です。割賦の場合の貸与設備の合計額は、一般設備は100万円以上 3,500万円以下、ハイテク・情報機器等設備は 1,500万円以上 6,000万円以下となっています。
割賦の賦払期間は4年6カ月以内(ハイテク・情報機器等設備は6年6カ月以内、公害防止設備は11年6カ月以内です。またリース期間は、設備の法定耐用年数によって異なりますが、3年以上7年以内となっています。割賦料は年賦、半年賦、月賦による支払、リース料は月賦による支払となります。

 全国中小企業設備貸与機関協会 東京都中央区築地3-12-11〈ナカシゲビル3F〉 03-5565-0845
 (財)長野県中小企業振興公社 長野市中御所岡田131-10 026-226-3739

5.小規模企業共済制度

小規模企業共済制度は、小規模企業者が事業を廃止したり会社の役員を退職した場合に、事後の生活の安定のために「事業主の退職金」ともいえる共済金を支給する制度です。中小企業事業団が国の全額出資によって運営しています。
共済への加入資格があるのは、常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の企業の個人事業主、会社・企業組合・協業組合の役員です。協同組合、中小企業団体中央会、商工会、商工会議所、金融機関などが加入の窓口となっています。
共済契約には第一種共済契約(以下「共済契約」という。保険的性格。)と第二種共済契約(以下「旧第二種共済契約」という。貯蓄的性格。なお、旧第二種共済契約は、平成8年4月より加入停止。)の2種類があり、それぞれ共済事由や共済金が異なっています。掛金は月額1,000円から 500円きざみの金額で、最高限度額は7万円となっています。最高限度額の範囲内において増額は自由にできます。
共済契約の掛金は、全額所得控除(小規模企業共済掛金等控除)され、共済金(一時金)は退職所得扱いとなります。また共済金の分割支給を受ける場合は、公的年金控除の対象となります。
小規模企業共済契約者のための還元融資として、小規模企業共済契約者貸付制度があります。貸付には一般貸付、傷病災害時貸付(疾病・負傷による入院、激甚災害の被災により経営に支障を生じた場合)及び創業転業時貸付(共済契約者が新規開業、転業を行う場合)があります。一般貸付の貸付限度額は10万円以上(5万円きざみ)で、掛金納付済額に一定割合を乗じて得た額と500万円のいずれか少ない額です。また傷病災害時貸付の貸付限度額は50万円以上(5万円きざみ)で、掛金納付済額に一定割合を乗じて得た額と500万円のいずれか少ない額です。また創業転業時貸付の貸付限度額は50万円以上(5万円きざみ)で、掛金納付済額に一定割合を乗じて得た額と 1,000万円のいずれか少ない額です。この制度の使用使途は主として事業資金で、いずれも無担保・無保証人です。

 中小企業事業団 (共済事業本部) 東京都港区虎ノ門 3-5-1 虎ノ門37森ビル 03-3433-8811

6.小規模企業指導官の相談・指導

中小企業庁と各通商産業局(沖縄総合事務局を含む)に小規模企業指導官が配置され、小規模企業者等の相談・指導等に当たっています。
来訪、書面、電話などによる経営、生産、技術、取引、金融、税制、労務、法律、情報、事業転換等に関する問題について相談を受ける相談業務、また相談・苦情等について必要に応じて関係機関へ斡旋する斡旋業務、小規模企業者からの陳情・要望等の処理業務が行われるほか、現地相談会が開かれ相談・指導が行われています。

 中小企業庁小規模企業相談室 03-3501-1511


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