1.業種別の近代化対策

業種別の近代化対策として、「中小企業近代化促進法」が制定されています。同法に基づく施策の内容は、業種を指定し、国によってその業種の近代化目標が策定され推進される「指定業種の近代化計画」と、近代化計画の内容を業界が自主的に実施する「特定業種の構造改善計画」、中小企業の存立分野の拡大を推進する「新分野進出計画」制度があります。
なお、業種別近代化施策には、このほか繊維産業構造改善臨時措置法、伝統的工芸品産業の振興に関する法律、中小小売商業振興法、環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律による施策があります。

(1) 近代化計画

指定業種は、中小企業性業種のうち国民経済の健全な発展を図る見地から「産業構造の高度化」を図るべき業種と、国民生活との関連性が高い物品又は役務を供給する業種であって「国民生活の安定向上」を図る見地から、早急に近代化を必要とする業種が政令によって指定されています。
指定業種になると、実態調査が行われ、実態に即した近代化計画が定められます。計画には、製品の性能・品質の向上、生産費及び製品供給の見通しなどの近代化の目標が掲げられるとともに、近代化のために実施すべき事項として新商品・新技術の開発、設備の近代化、適正生産規模、競争の正常化、取引関係の改善などの事項及び従業員の福祉向上、消費者の利益増進、環境保全などの近代化に際して配慮すべき事項が定められます。
これらの近代化計画は、その業種が到達すべき長期的な目標(おおむね5年後)等について主務大臣が定め、その要旨を公表します。この指定業種に属する中小企業者には、中小企業金融公庫及び国民金融公庫より設備の近代化等に必要な資金の貸付が行われます。

(2) 構造改善計画

この制度は前項の国によって示された「近代化計画」の目標を達成するために、各企業間の協力に基づいて主として業界が自主的に業界ぐるみで共同事業を中心に実施し、業界全体の構造改善を図るものですが、実施するには国の指定が必要で、指定された業種を「特定業種」と呼んでいます。特定業種は前項の指定業種のなかから緊急に構造改善を進める必要性のある業種を制令で指定しますが、指定に際しては国民経済の健全な発展又は国民生活の安定向上を図る上で重要な業種であることなどが条件とされています。
業種指定と併行して、業界では「構造改善計画」を策定しますが、この計画は商工組合など業界を代表する団体が策定し、その推進の主体ともなります。
従来こうした構造改善事業は、特定業種に属する中小企業者による同一業種内での事業に限られていたため、近年の経済環境の変化、中小企業問題の複雑化に対し、十分な対応を果たしていませんでしたが、昭和50年7月の近促法の改正により、中小企業の個々の業種の枠を超え「産業ぐるみ」あるいは「地域ぐるみ」の構造改善が推進されることとなり、特定業種と関連性の高い業種として主務大臣が指定する関連業種に属する事業者と共同して行う「関連業種協調型構造改善」事業も主務大臣の承認をうけることができることとなりました。また、昭和59年度から、従来の設備の近代化及び新商品・新技術の開発に加え、経営面の革新に主眼を置いた総合的な「経営戦略化構造改善事業」を推進しています。
構造改善計画の期間は、原則として5年間とし、全期間にわたる「全体計画」と2年目以降の「年度別計画」からなっています。この構造改善計画には、①構造改善事業の目標、②構造改善事業の内容…ア.新商品・新技術の開発等の事業(共同の新製品の研究開発、共同のデザイン開発、共同試験研究、人材養成等)、イ.生産又は経営の規模又は方式の適正化事業(企業合同、協業化、共同化、業務提携、転廃業等企業のグループ化)、ウ.設備の近代化事業(共同投資、委託生産、生産品種の専門化、過剰設備の処理等)、エ.取引関係改善事業(共同販売、共同購入、ブランドの統一、新市場開拓等)、③構造改善事業に必要な資金及びその調達方法、等が記載されることになっています。
この構造改善に対する助成措置としては、金融面では、中小企業金融公庫及び国民金融公庫の構造改善等特別貸付や中小企業事業団の融資その他の特別措置がとられています。また、税制面の優遇措置としては、計画実施企業が所有する機械等の割増償却、構造改善計画の増加試験研究費等の法人税額の特別控除などがあります。

(3) 新分野進出計画

本制度は昭和50年7月の近促法改正により設けられた制度で、以前の中小企業の業界内部での構造改善事業等による合理化、近代化に加えて、国民ニーズの方向に適合する新規の事業分野へ、中小企業がその事業を進出させていくことを助成し促進することにより、中小企業の存立分野の拡大を図ることを目的としたものです。
この制度は新分野への進出を促進することが特に必要であるとして、主務大臣が指定する「進出促進業種」に属する中小企業者の組織する事業協同組合等が主務大臣の承認を受けた「中小企業新分野進出計画」に基づいて、新商品の開発等の新分野進出事業を実施するものです。
新分野進出事業の内容は、①試験研究の実施に関する事業、②試験研究の成果の企業化に関する事業、③需要の開拓に関する事業、④旧設備の処理に関する事業、⑤その他、となっています。
この新分野進出事業に対しては、新製品等の開発を促進するため、金融上の助成措置として、中小企業事業団の融資(構造改善等高度化貸付、知識集約化貸付)があります。

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