4.中小企業の課題と対応
<中小企業の創造的革新>
(4) 経済構造改革(高コスト是正、規制緩和等)の進展の中で経営力強化が求められる(2頁目)。

    規制緩和されるタクシー業に福祉サービスを導入して活躍する企業

 B社(東京都、従業者数130人)は元来、一般貨物運送業・倉庫業を中心にビジネスを行ってきたが、京浜地区の製造業の不況から、産業廃棄物運搬や巡回入浴サービスなどの福祉事業へと多角化を進めてきた。平成9年にタクシー事業における新規参入のための需給調整基準の弾力化措置等の規制緩和が行われたので、免許取得と共に車椅子の乗降用リフトを装備したワンボックス車を18両購入し、さらに30両増車を行い、全国で初めてリフト付タクシーで流し営業を開始した。その背景には「自宅に閉じこもりがちな老人をもっと外に連れ出してあげたい」との、社長の念願がある。一般のタクシーより倍以上の価格をする車輌を使い、これから激化する市場にいかに他社と競合するかというのが大きな問題ではあるが、顧客の会員化や乗務員の指名制度を通じて差別化を図り、さらに予約システムのネットワーク化や全車にカーナビを装備させ実車率を高めるという戦略を導入していく予定である。

    規制緩和で生じた市場に独自のマーケティングで挑む地ビール企業

 C社(長野県、従業者数10人)は老舗ホテルの経営者が設立した地ビールメーカーである。平成6年4月に地ビールに関する規制が緩和され、その2年後の平成8年にビール製造免許を取得し会社を設立した。他の地ビール企業より一足遅れたスタートではあったが、ユニークなマーケティングにより事業を拡大してきている。通常、地ビールは樽に詰められ、特定の生産地で特定のレストランでしか販売していないが、A社では缶に詰めた製品を県内の大手酒類卸企業を通じて一般に販売をしている。またインターネットを通じて配送料無料販売を行い、全国展開を図っている。さらに、インターネット上にビールの製造方法を掲載したり、消費者(利用者)からのメッセージ欄を設けて、顧客の確保に努めている。

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