4.中小企業の課題と対応
<中小企業の創造的革新>
(3) モノづくりを支える熟練技術・技能の維持強化が求められる(2頁目)。

    仕上げの工程で熟練技術・技能者の経験と知識が不可欠となっている事例

工作機械の製造を営むG社(岡山県、従業者数235人)では、製品に対して非常に高い精度を要求されることから、ミクロン単位の寸法精度を出すために、熟練技術・技能者の経験と技術・技能が不可欠となっている。同社の工作機械の寸法精度を保証しているのは、熟練技術・技能者による仕上げ工程での「すりあわせ」と呼ばれる手作業である。この切削作業は、人間の指先の持つ研ぎ澄まされた感覚に頼らなければならず、究極的には作業者の固有な感性に支えられるものである。それは、単純とも見える作業を繰り返す中で、自らの体に覚えさせるという経験によってのみ獲得される技術・技能である。
 同社の工作機械においては、3メートルのガイドウェイの真直度(平ら度)の誤差は2~3ミクロンである。こうした寸法精度を確保するには、どうしても熟練技術・技能者が、定盤によりわずかな凹凸をチェックし、やすりで削っていかなければならない。機械でこうした平面加工を行った場合、どんなNC機械であろうとも10ミクロンまでの真直度しか得られない。それは、機械加工が熱による影響から逃れられないことにある。

第65図 熟練技術・技能工の継承・育成が不十分な理由

第65図 熟練技術・技能工の継承・育成が不十分な理由

→熟練技術・技能の価値・魅力の認識向上、若年層への継承の環境整備等が重要と考えられる。

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