4.中小企業の課題と対応
<創業と企業成長>
(1) 新たな企業の創出や新分野進出等による一層の成長が求められる。エンジェル予備軍の顕在化も重要(6頁目)。

A社(京都府、従業者数4人)はプリンタドライバー用ソフト開発を業務としている。社長は大手電気メーカー系列のソフトウエア会社にエンジニアとして5年間勤務していたが、同製品を親会社に納品するだけでなく、市場の更なる拡大を図るため、平成7年にスピンオフを決意した。当初は退職を引き止められたものの、企業内の活性化に結びつくものとの理由から、その後は逆に支援を受けることができた。会社設立からインキュベータ施設入居までの6か月間、前勤務先に営業スペースを設置してもらえたり、現在も互いに受発注し合い、相互に支援し合う体制ができている。前勤務先での技術営業の経験から、市場の把握や顧客開拓は独立前から土台造りができていたため、売上げは年度ごとにほぼ倍増し、平成9年度は7、000万円の売上げを見込んでいる。さらに現在では、ソフト開発のみでなく、大手メーカーのプリンター相談業務をアウトソーサーとしても引き受けている。

B社(東京都、従業者数9人)はオペラやミュージカル等の舞台を中心とした番組を編集し、会員のみに放映しているCS放送事業の企業である。以前、大手流通企業の放送事業部に所属していたB社の社長は、平成8年の放送事業に関する規制緩和を契機に創業を決意した。米国と比べ、多様性や顧客へのサービスにおいて遅れをとる我が国の放送事業ではあるが、これからの知的資産の創造力が問われる時代において、社会が、そして視聴者が多様化していく必要があり、まずは放送番組の多様化により対応していくべきであるとの思いから、舞台に特化した形での事業を立ち上げた。また市場のニーズにも十分着目している。人気番組を次から次へと流すことを主眼点とはせずに、視聴者がオペラを見たいときの「ムード」に答えるべく番組を編集している。創業より2年目で会員は既に13万世帯を超え、今後は視聴者のより多くの「ムード」に対応すべく、オペラ以外での特定分野の放送事業に進出していく予定である。

大手電機メーカーのC社は、平成6年に社内ベンチャー制度を開始した。同制度発足の理由は、「市場開拓(開発・製造・販売)のスピードアップ、市場情報チャネルの多様化を図り、事業領域を拡大し、社内におけるベンチャー精神を醸成するとともに、リスクテーキングな企業風土を創出する」こととし、対象となる事業はC社のビジネスに関連するものならば何でもOKとなっている。但し3年目の単年度黒字化が条件とされている。現在までに10社が設立され、D社(神奈川県、従業者数7人)は、この制度の8番目の企業として平成7年に設立された。D社の社長は、C社の社員時代に米国に研修留学をしていた時に、同じC社から留学していた中国人と知り合い、共同で創業を行う決意をした。さらに、両氏がシリコンバレーを訪問時に、現地のコンサルタントと知り合い、日・中・米の3国をネットワーク化するビジネスの素地を構築した。D社設立時の出資金は3、000万円で、その比率は、C社が40%、残り20%ずつを3人で出資し合っている。D社の現在の主力製品は、デジタルカメラ対応の写真整理ソフトであるが、今後、日・中・米を結んだマルチメディアソフトの開発を目標としている。

元へ中小企業白書の要点に戻る