3.内外の中小企業と中小企業政策の変遷

我が国及び欧米諸国(米、EU、英、独、仏等)で多くの共通点がみられる。

  • 不利な経営環境に置かれた中小企業の自助の助成の観点及び政策手段に共通性がみられる。
  • 近年は技術開発、人材育成等、コンサルティング等ソフト経営資源の強化支援創業等による市場活性等に重点がおかれている。

我が国

  1. 戦後復興期の1948年、中小企業庁が設置され、我が国の中小企業政策はこの時期に金融、組織、診断・指導の3つを大きな柱として体系化が図られた。
  2. 55年以降、高度成長期に入ると、「中小企業基本法」が制定され、産業政策の一環として設備近代化助成による中小企業近代化・高度化政策等に重点がおかれることとなった。
  3. その後、73年の第一次石油危機を契機とする安定成長期、85年のプラザ合意を契機とする転換期には、人材育成や技術力向上、情報化等のソフト面を重視した業種全体としての近代化政策や、経済環境変化を受けた事業転換政策、地域振興政策等に重点がおかれた。
  4. さらに、近年では、バブル崩壊以降の開業率の低下や大競争時代の到来等を背景とする創業や新分野進出、技術力の向上、産業集積の活性化支 援等に重点がおかれている。

欧米諸国

  1. 米国の中小企業政策は、市場経済を重視しつつ、自由競争を支える活力ある多数としての中小企業の支援の観点から、保証を中心とする政策金融、予算・税制(軽減税率 投資減税等)、創業支援(SBIC)、研究開発等支援(SBIR、MEP )、地域における指導事業(SBDC)、政府調達、規制緩和による負担の軽減等が実施されている。各州レベルでも創業支援等が実施されている。
  2. EUの中小企業政策は、市場経済を重視しつつ中小企業の自助の助成の観点から競争環境の整備、機会の確保等を支援し、欧州市場の活性化を図ることを基本的視点として、低利融資等金融面の措置や予算、研究開発支援、創業支援、情報提供(ユーロインフォセンター)等、ソフト支援を中心として実施されている。
  3. 英国の中小企業政策は、80年代までは創業支援に重点がおかれ、90年代に入ってからは、既存中小企業の育成・成長にも重点がおかれた。金融、予算及び税制(軽減税率、投資減税等)、地域における指導事業(ビジネスリンク)、研究開発支援等が実施されている(97年の労働党政権成立後の中小企業政策についてはまだ明確でない)。
  4. ドイツの中小企業政策は、市場原理に基づく自助の助成を基本原則として中小企業が差別されることのない環境整備が重視されている。信用保証や低利融資等の金融支援、予算・税制支援(投資減税等)、創業支援、研究開発支援、政府調達、指導・人材育成等が実施され、州レベルでも多くの施策が実施されている。
  5. フランスの中小企業政策は、80年代以降、雇用創出及び地域振興等の観点からの創業支援策が重視されるとともに、最近では欧州統一市場での競争に直面する中で、経済活性化の観点からの中小企業の技術力・経営力の向上等が重視されている。低利融資等の金融、予算・税制(軽減税率)、研究開発支援、人材育成、情報提供、政府調達、輸出振興等が実施されている。
  6. イタリアの中小企業政策は、従来、南部の開発政策の中で扱われてきた。また、各州とその下の市町村や各団体等の果たす役割が大きく、従来より人材育成、研究開発、情報提供、輸出支援等が実施されている。なお、国レベルでも近年、研究開発等に対する予算面での支援、人材育成や輸出組合の結成、地域産業集積等に対する支援が実施されている。


第39図 欧米諸国における中小企業と中小企業政策

第39図 欧米諸国における中小企業と中小企業政策

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