1.平成9年度の中小企業の景気動向
(6) 製造業では同一業種内の企業間格差が明確化している(2頁目)。

    自社製品開発により成長している事例

精密機械器具製造業を営んでいるC社(神奈川県、従業者数74人)は、X線テレビカメラ、放送用テレビカメラの部品を専門に扱う下請企業であったが、市場に直結した自社製品の開発を目的に技術者の育成に取り組み、産業用レーザー顕微鏡分野においてLSIフォトマスク欠陥検査装置の自動化に成功した。半導体市場が急成長する中、脱半導体を目標に研究開発された分野が産業用レーザー顕微鏡であり、その中でも同社は走査型カラーレーザー顕微鏡では、世界市場を独占するまでに至っている。
同市場のユーザーは半導体メーカーにとどまらず、新素材、バイオテクノロジー、医療、化学ほか広範囲にまたがっており、同社のますますの成長が期待されている。

    織物から炭素繊維への転換に成功した企業

絹、人絹織物、ナイロン、ポリエステルなどを主製品としていたA社(石川県、従業者数11人)は、現在、ポリエステル生産を関連会社に移管し、炭素繊維織物に特化した生産を行っている。昭和60年代前半の合繊不況の下で経営状況が悪化する中、県繊維試験場から繊維炭素の試織りを勧められたことを契機として研究開発を開始した。炭素繊維は曲げには強いが引っ張り強度が弱く簡単に切れてしまうという取扱いが非常に困難な素材であったが、素材メーカーの開発担当者と共に試行錯誤を繰り返し、着手してから5年後ようやく完成に至った。この炭素繊維織物は、人工衛星のアンテナの芯材として採用されているのをはじめ、建築・土木分野における強度補強の需要も高まる中、炭素繊維織物を使った新幹線や自動車のブレーキ材への応用にも取り組んでいる。

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