特集2
平成10年度全国中央会通常総会開催

全国中央会の通常総会が、5月27日、東京赤坂の東京全日空ホテルで開催された。
井上光一会長は「最近の中小企業の景気は厳しいというより、悲惨な感じがする。景気が回復軌道に乗るよう関係方面へ強力に働きかけていく」との挨拶がなされた。
当日は来賓として、橋本総理大臣、堀内通商産業大臣、島村農林水産大臣、伊吹労働大臣が出席され、それぞれより祝辞を述べられた。
総会において、景気対策、法人課税の見直し、中心市街地の整備・活性化等の一層の推進など6項目の要望を採択し、関係方面に対して強力な運動を行うこととなった。

中小企業対策に関する要望

    平成10年5月27日
    全国中小企業団体中央会
    平成10年度通常総会決議

わが国経済は、個人消費や住宅投資の落込み、設備投資の鈍化等による最終需要の減少を背景に、企業の生産・販売活動が縮小し、失業率も高水準で推移するなど、景気は停滞し、一層厳しさを増している。特に、中小企業の景況は、受注の低迷、収益の悪化、民間金融機関の貸し渋り等による資金繰りの悪化等により、極めて深刻である。
また、中小企業は、わが国経済の再活性化のために進められている経済構造改革の奔流の中で、下請分業構造を始めとする企業間関係の流動化、東アジア地域との国際分業の一層の進展、熟練技能工の減少によるものづくり機能の低下、製・配・販の垂直的統合等による流通経路の再編、規制緩和による企業間競争の一層の激化などの構造的な難題に直面し、厳しい試練を受けている。
このような状況の中で、中小企業は、技術力の向上、製品の高付加価値化、新分野・新市場の開拓等に積極的に取り組み、経営革新を行い、自らの発展基盤の形成・強化に努力している。
ついては、全国650万中小企業が明るい将来展望を持ち、経営の安定と活力の増進を図ることができるよう、下記事項の実現について、特段の配慮を強く要望する。


1.景気対策について

    わが国経済は、物価の下落と景気の後退が進行する「デフレスパイラル」の瀬戸際にあり、内需の振興拡大が焦眉の急となっている。
    幸い、4月24日に、新社会資本整備等公共投資や減税による内需拡大策及び中小企業対策を盛り込んだ、総額16兆6、500億円の過去最大規模の総合経済対策が決定されたところである。
    ついては、萎縮・低迷しているわが国経済に活力を注入し、一刻も早く回復軌道に乗せるため、その裏付けとなる補正予算案と関連法案を可及的速やかに成立させ、確実に実行に移すことが必要である。
    また、今後とも、経済・金融情勢を的確に把握し、更なる追加景気対策が必要な場合には、切れ目のない措置を臨機応変に講じていくことが必要である。
    さらに、中小企業に対する民間金融機関の貸し渋り・選別融資が依然厳しいことにかんがみ、民間金融機関に対する是正指導を引き続き強力に行う必要がある。
    加えて、中小企業信用保険法等の一部改正による中小企業者の範囲の拡大の早期実施を図るとともに、政府系中小企業金融機関を活用した支援策の一層の充実とその弾力的運用に努める必要がある。

2.法人課税の見直しについて

    平成10年度税制改正において、法人税及び法人事業税の基本税率の引き下げが行われ、法人課税の実効税率49.98%から約3.6ポイント引き下げられ、46.36%となった。
    しかし、欧米諸国と比べて依然高い水準にあることから、中小企業の実質的な税負担の軽減を図るため、平成11年度改正においても、引き続き、国際水準をめざしてもう一段の引き下げを行う必要がある。
    ただ、これに関連して、法人事業税について、赤字法人課税を含む外形標準課税の導入がとりざたされているが、仮に、赤字法人への課税が行われることになれば、収益性が低く、担税力の弱い多くの中小企業が倒産や廃業に追い込まれることは必至であり、長期の不況にあえぐ中小企業に対する増税で大企業の減税を行うことになりかねない。
    したがって、多くの中小企業に過度な負担を強いる赤字法人課税を行うことには絶対反対である。

3.組合制度の見直しについて

    中小企業組合は、中小企業のニーズの多様化と変革する時代の要請に応えた組織機能の革新が求められている。
    このような要請に応えるため、先の臨時国会で、「中小企業等協同組合法」及び「中小企業団体の組織に関する法律」が改正され、緊急に対応すべきものとして「組合が施設を活用して行っている事業についての員外利用制限の緩和(100分の200まで)」と「組合員の新たな事業分野への進出の円滑化を図るための事業の組合事業への追加」が行われ、本年2月1日に施行されたが、なお積み残された課題(組合と会社間の組織変更、中小企業団体中央会の機能強化等)もあることから、今後、中小企業政策及び組織化政策のあり方の検討とともに、組合制度の抜本的見直しが行われることとされている。
    ついては、抜本的見直しの検討を早急に開始し、できるだけ早い機会に必要な制度の改正を行うことが必要である。

4.中心市街地の整備・活性化等の一層の推進について

    大店法に代わる新たな大規模小売店舗立地法、改正都市計画法及び中心市街地活性化法が成立の運びとなったことを踏まえ、今後、これらの法律に基づく政省令及び指針等の作成に当たっては、国会におけるこれまでの審議経過及び附帯決議を十分尊重し、関係者の意見を十分反映させるものとするよう特段の配慮を行う必要がある。
    また、これらの法律の運用に当たっても、魅力ある街づくりや中小小売商業者の円滑な発展に資するよう所要の配慮がなされることについて、国においても、関係者に対し十分な周知徹底に努めることが不可欠である。

5.中小企業対策予算の確保について

    極めて深刻な状況に置かれている中小企業の現状にかんがみ、平成11年度の中小企業対策予算の編成に当たっては、不況克服、様々な環境変化に適応できる経営革新への取組みに対する支援策の強化、将来を支えるベンチャーの育成策を始めとする創業支援策の強化などの政策課題に十分対応できる予算を確保することが必要である。

6.中小企業組織化対策の充実強化について

    わが国経済の構造改革が急速に進行する中、技術、情報、資金などの経営資源に制約がある中小企業が、変化に円滑に対応していくためには、相互に連携し、必要とする経営資源を補い合うことにより、これらの制約を克服することがますます重要になってきている。
    このような構造改革に積極的に対応する中小企業の自主的な組織的取組みを強力に支援するため、組合はもとより、組合以外の多角的連携を含め、中小企業の戦略的ネットワーク化を推進するとともに、その共同事業についても支援策を強化することが必要である。また、併せて、これらの組織化政策の推進の核となっている中小企業団体中央会についても、その指導機能を十分に果たせるよう、所要の人員・予算の確保を始め指導体制の整備・充実を図る必要がある。

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